大阪市の中小企業支援機関の「大阪産業創造館」と甲南大学は、実家が事業を営む学生を主な対象に、自身も家業を承継した現役経営者を講師として迎え、世代交代を機に展開する新規事業や業態転換について学ぶ講義「～家業と向き合う3ヶ月～現役経営者と学ぶ後継者のためのキャリアデザイン」を9月より開講します。

大阪産業創造館では、本講座を2011年から関西学院大学でも実施していますが、中小企業経営者を多数輩出していることで知られる甲南大学でも開講することになりました。中小企業の後継者問題が深刻になっている昨今、関西圏の大学で事業承継に関する取組みが少しずつ拡がってきているといえます。
2011年の帝国データバンクの「後継者不在企業の実態調査」（※）によると、国内企業の65.9％、大阪府下の企業に至っては73.9％が後継者不在という結果が出ています。一方で、後継者が不在となっている年商10億円規模の企業には高い企業価値を持つ優良企業が多いことも明らかになりました。

日本は95％が同族経営といわれていますが、厳しい経営環境が続く中、「子どもに同じ苦労をさせたくない」という中小企業経営者も多く、優良な技術やノウハウを持ちながらも、後継者が不在という理由で廃業するケースが少なくありません。しかしながら、一方で先代から引き継いだ経営資源をベースに新たな業態で成長する老舗企業の事例も多く、世代交代は企業が成長する上でのチャンスともいえます。

そこで、本講座ではさまざまな業界で活躍する若手経営者8人が講師として登壇。世代交代時の自身の葛藤や苦労話をはじめ、自身が取組んだ業態転換、新規事業などの新しい挑戦を語ります。また、受講生の家業を題材にしたグループワークなども取り入れた実践的な内容となっています。

甲南大学の西村順二教授は「アントレプレナーシップやリーダーシップを学ぶだけではなく、後継社長が経営課題をどのように克服しているのか、生の声を肌で感じて欲しい」と語っています。大阪産業創造館の山野も「先輩経営者の体験や挑戦をシェアすることで社会に出る前に家業の承継を人生の選択肢として考える機会にしてもらいたい」と語っています。

大阪産業創造館は、今後も関西圏の大学や金融機関など、さまざまな組織と連携して中小企業の事業承継を支援していく予定です。

（※2011年12月帝国データバンク調べ）
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p111206.pdf